今日の毎日新聞(全国版)に金満里さんの記事が掲載されました!
下記、毎日新聞ホームページより転載。
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ひと:金満里さん=自身のルーツ韓国で公演する劇団「態変」主宰者
◇金満里(キム・マンリ)さん(57)
常に「未踏の美」を目指し創造と破壊を繰り返してきた。役者全員が重度障害者の劇団「態変(たいへん)」(大阪市)で作、演出も担う。植民地時代の朝鮮で独立運動に加わり、逃走先の日本で韓国古典芸能のプロデューサーとなった人物の生涯を描く「ファン・ウンド潜伏記」を携え、3月、彼の故郷である韓国南部・固城(コソン)とソウルで公演する。ファンは古典芸能の名手だった母・金紅珠(キムホンジュ)さん(故人)の前夫だ。「異郷・日本で人生を終えたファンの故郷に作品を戻し、彼の人間解放、独立への思いを引き継ぎたい」
3歳でポリオを患い、7歳からの10年間を施設で過ごした。障害を「克服の対象」とする世間の常識に反発。21歳で自立し、障害者解放運動に没頭したが、「論理で事の是非を言い切る違和感」が膨らんだ。「善悪を併せ持ち、割り切れない存在が人間。その混とんを障害者の身体で表現したい」と、独学で舞台表現を工夫し、30歳の時に劇団を旗揚げした。異形の者が転がり、健常者が自明視する「美」の概念を覆す舞台は当初、「挑発芝居」と称された。
ファンの生涯は4年前、母の軌跡を追う中で知った。「最前衛を掲げる私たちの表現も、先人の闘いや古典があってこそ成り立つんだと実感した」。舞台には韓国人の障害者も出演する。「韓国人と在日、そして日本人が対等な関係を作ろうとするきっかけになれば」。公演のテーマは越境だ。<文・中村一成/写真・幾島健太郎>
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■人物略歴
大阪府生まれ。ALICE賞、飛田演劇賞大賞など受賞。問い合わせは「態変」(06・6320・0344)。
毎日新聞 2011年2月21日 東京朝刊